この模型を実物大で創りたい
市内の中学校が創立50周年を迎え、記念事業の実行委員長からご相談を受けました。初回の打ち合わせで示されたものは、何とも不思議な形をした粘土の模型。創立50周年にあたり、生徒たちが自由な発想で創り上げたこのイメージを、実物大のモニュメントとして形にし校内に設置するという事業が、50周年のハイライトとして計画されていました。
造形作家との二人三脚
「これは、大変な相談を受けてしまったな・・・」。率直な第一印象です。表現の難しさ、強度など構造的な問題、予算・・・、本当に実現できるだろうか。様々な制約の中から導き出した選択肢は、FRP製のモニュメント。そして、これを形にしてくれるのは一人しかいない。頭の中に顔が浮かんだ造形作家を訪ねて、市内から車で1時間、三水村にある工房を訪ねました。「どうせなら生徒たちも巻き込んで、みんなの想いを実現させましょう!」。二人三脚でのプロジェクトがスタートしました。
設計〜原型加工
この複雑な形を表現し、長期間にわたっての屋外設置に耐え得る構造。試行錯誤しながら大まかな設計図を作成し、いよいよ原型加工のスタートです。FRP樹脂の型を取るための原型を、発砲スチロールを削り出して造っていきます。生徒たちの想いが詰まった粘土の模型を、丁寧に丁寧に、忠実に再現していく造形作家の職人技には、ただただ驚くばかりです。
FRP造形の完成
発砲スチロールの原型が完成し、関係者の皆さんにもチェックをして頂いた上で、FRP樹脂の型取り〜本体の製作です。独立するパーツ、連結させるパーツなど、常に完成形をイメージしながら複雑な組み合わせを形にしていきます。そして、着手から2ヶ月、ようやくFRP樹脂による本体が完成しました。さあ、ここからは学校に搬入して、いよいよ生徒たちとのコラボレーションです。
生徒との共同作業がスタート
「世界に二つとない、このオンリーワンの作品を表現できるのは、生徒たちしかいません!」。学校に搬入したFRP樹脂の本体に色をつけて仕上げる作業を、生徒たちに担当して頂くように提案しました。2ヶ月に及ぶ美術部のみんなの悪戦苦闘がスタートです。造形作家の指導を受けながら、最初は恐る恐る塗り始めた生徒たちでしたが、コツを掴みはじめると、それぞれが思い思いの感性で、一筆、一刷毛、気持ちを込めての色付け作業が進みました。この様子は地元新聞にも取り上げられ話題になりました。
中庭からみんなを見守る「LOOCLOCK」
美術部の生徒が頑張って仕上げ作業をしている間に、土台部分に設置される銘板や、全校生徒のメッセージが書かれたパネルの製作が同時進行で進められました。そして学校が50周年を迎えた11月、校舎の中庭に無事に設置されました。ご相談を頂いてから約半年、生徒たちの夢が少しづつ形になっていく過程に寄り添う時間は、「造形」の力を改めて認識する大変貴重な経験でもありました。生徒たちによって「LOOCLOCK(ルックロック)」と名付けれらたこのモニュメントは、今日も中庭から生徒たちを見守りながら、刻を告げています。